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「鎭魂曲」

 ハイネのロマンツェロなどは、數ヶ月の間に病苦と鬪ひながらも一氣に書き上げて、それをはじめから一卷として世に問うたものらしい。ああいふ慟哭的な詩などは一篇々々引きちぎつて讀まされるよりも、一卷として讀みとほすことによつて、我々の感動は別して強まるのである。その他、ヴェルレェンの「叡智」と云ひ、リルケの「時祷書」と云ひ、又コクトオの「プランシャン」と云ひ、さういふ連作體の詩としては最高度のものであらう。さういふ一卷をなさずともいい、せめて十篇位でいいから、さういふ連作體の詩の試みも若い詩人たちにやつて貰ひたいと僕は思ふのである。現代詩人の複雜な心情はもはや十行やそこいらの詩の中にははひり切らぬのならば、一篇々々としてはいくら物足らぬところがあつてもいい、それら數篇が相寄つて互に補ひ合ひながら、はじめて一心情を形成する、――さういふのが連作體の詩の特色である以上、野心的な詩人たちには小説などに手を出すよりは、ときどきさういふ詩作をもして貰ひたいのである。それは、海がその深みを加へれば加へるほどその青みを増すやうに、それらの詩を積み重ねれば重ねるほどその心情の凄みを増すやうなものであらしめたい。

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