以前は私などの所へも時々若い人で戯曲やラジオドラマを勉強したいから指導してくれとか作品を書いたから読んでみてくれとか言って来る人があった。ひどい時には一月に四五人くらいそういう人がいたものである。ところが三四年前からパッタリそういうことがなくなった。初めは近年私が作品をあまり発表しないから私の名前を知っている人が少くなったせいだと思っていた。以前ひんぴんとそういう人が来た頃からそういうことをうるさがるたちなので来ないにこしたことはないのでそれ自体としてはありがたいわけだ。ところでこういう現象は私一人のことではないらしいことに最近気がついた。一般に若い人たちが先輩作家をたよって指導してもらうということは非常に少くなったらしい。そしてこの現象の中に現代というものの著しい性質が現れていると思う。つまり今の時代はもしかすると非常な急角度で新しいエポックの中に突入しつつある時代ではないかという気がする。しかも残念ながらそれは歓迎することのできない新しさである。
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