[東京 16日 ロイター] -12月日銀短観では、先行きの業況判断DIが足元から小幅悪化した。市場では先行きも順調に改善するとの見方が多かっただけに、企業の慎重な見方に「サプライズ」との声も浮上した。
来年4月の消費増税後の需要減を企業が先取りしているとの見方もあるが、先行きには楽観的な声も少なくなく、しばらくはこれから出る経済指標ごとに市場心理が振れる展開も予想される。
<先行き悪化の業種に広がり>
日銀が発表した12月全国企業短期経済観測調査(短観)では、大企業製造業?業況判断指数(DI)はプラス16と、前回の9月短観から4ポイント改善した。だが、2014年3月予測はプラス14へと鈍化した。
ロイター集計の民間予測中央値ではプラス17と見込まれていたため、市場関係者の間では想定外の「サプライズ」(SMBC日興証券?シニアエコノミス
ニューバランス スニーカート、宮前耕也氏)とみられている。
大企業製造業だけでなく、全規模全産業で指数は先行き2ポイント悪化する見通し。大企業非製造業が3ポイント、中小企業の製造業が2ポイント、非製造業が3ポイントそれぞれ悪化する。
先行きが悪化する業種(大企業)は、木材?木製品(8ポイント悪化)、自動車(同8ポイント)、電機(同2ポイント)、建設(同6ポイント)、物品賃貸(同15ポイント)、卸売(同5ポイント)、通信(同4ポイント)、情報サービス(同8ポイント)、対個人サービス(同8ポイント)、宿泊?飲食サービス(同5ポイント)など。
民間エコノミストの間では「消費増税をにらみ企業が心配し始めている」(JPモルガン証券?シニアエコノミスト、足立正道氏)、「駆け込み需要を取り除いた需要の基調は弱い可能性がある」(SMBC日興?宮前氏)との見方が出ている。
特に自動車や電機など耐久消費財の業界で「駆け込み需要の反動後を織り込みつつある」(クレディスイス証券?チーフエコノミスト、白川浩道氏)、素材産業は「自動車向けなどの作りこみが終了し、反動減を織り込んでいる」(伊藤忠経済研究所主任研究員?丸山義正氏)とみられる。
電機などは「スマートフォン(スマホ)向け部品などで、グローバルに需要がピークアウトした可能性もある」(クレディスイスの白川氏)という。
逆に小売は先行きが8ポイント改善する見通しで「これから駆け込み需要が見込まれる」(同氏)と予想される。
もっとも今回の調査は「11月後半以降の円安?株高を織り込んでいない」(SMBCフレンド証券?シニアマーケットエコノミスト、岩下真理氏)として、企業のマインドが再び改善するとの期待もある。
一方で、JPモルガンの足立氏は、今回の調査では昨年と比べて大幅な円安にもかかわらず「海外製品需給判断」が前回調査よりも1ポイントしか改善していない点に着目。「海外経済が改善していないうえ、日本企業の(海外移転継続など)構造要因もある」として、円安の輸出けん引効果に慎重な見方を示している。
政府内でも第1次安倍政権でのドル/円の水準である110円台のレートを懐かしむ声と、過度の円安進行による輸入インフレと長期金利上昇を懸念する声の双方が聞かれ、今後論点となりそうだ。
短観公表を受けて、16日午前の日経平均<.N225>は前営業日比で反落した。「米量的緩和の縮小が警戒される中で、日銀短観の先行きに慎重な見方が示され、利益確定売りのきっかけとなった」(楽天経済研究所シニア?マーケットアナリスト、土信田雅
ニューバランス レディース之氏)とみられている。
増税前の駆け込み需要と基調的な需要を区別するのは、日銀関係者らも難しいと認めており、増税後の景気?物価動向をめぐり、市場では悲観と楽観が交錯することになりそうだ。