■常に集団で作業/身体検査はなし/継続的に混入か
食品大手マルハニチロホールディングスの子会社「アクリフーズ」群馬工場(群馬県大泉町)で製造した冷凍食品から農薬「マラチオン」が検出された問題は、包装直前に人為的に混入された疑いが強いが、工場内に持ち込んだ手段や、混入方法は不明だ。厳しい安全管理態勢の「死角」はどこにあったのか。アクリ社は10日、群馬県警に被害届を提出。県警は工場内部の薬物鑑定や従業員からの聴取を中心に捜査を本格化させている。
■ラインは厳格
「常にグループで行動しており、人の目を盗んで農薬を入れるなんて無理」
商品の製造ラインで勤務する女性従業員は話す。
アクリ社によると、
ニューバランス 574工場には1階にグラタンとピザ、2階にホットケーキとコロッケ、フライと計5つの製造ラインがある。これまでにピザ、コロッケ、フライの3ラインで製造された計25商品で異臭を確認。うち9商品からマラチオンが検出されている。
異臭商品はピザ(15商品)、フライ(9商品)の2ラインに集中。コロッケのラインでは1個のみだったが、基準値の150万倍という高濃度(1万5千ppm)を検出している。
複数の従業員によると、製造ラインは担当が決まっており4、5人~十数人単位のグループで作業。商品は加工、凍結処理された後、ホットケーキは2階、残る4ラインの商品は1階の包装室で袋詰めされて冷凍庫で保管、出荷される。製造ラインから包装までの工程は数時間程度という。
各ラインは独立した部屋で、作業を指導する「オペレーター」と呼ばれる監督役を除き従業員がライン間を移動することはほとんどない。コロッケの製造ラインで働く女性は「30分おきに消毒や毛髪が落ちていないか注意を促すアナウンスが流れ、手袋のずれなどもオペレーターから厳しくチェックされる」と明かす。
4種類の商品を袋詰めする1階の包装室ではラインごとに作業するが間仕切りなどはない。ただ、2交代制で約40人が一斉に作業するため人目が多く、繁忙期にはライン担当の従業員が包装を手伝うこともあるものの、「ライン以上に(安全管理は)厳格」(女性従業員)という。
■「抜け穴」存在
異物の持ち込みについては一定の規制はあるものの、「抜け穴」の存在も浮かび上がる。
従業員が着る作業服は会社の貸与品で、ポケットがないか縫い付けられている。「リップクリームも持ち込めない」(男性従業員)が、製造ラインなどに入る際にカード認証などのセキュリティーはなく、ボディーチェックも行われていなかった。
県警が押収して解析を進めている工場内部のカメラも、「防犯カメラというより、商品の衛生管理用」(捜査関係者)で、不審な動きまで克明にとらえているかは疑問が残る。別の男性従業員は「袖口などに(農薬を入れた)ポリ袋を忍ばせることは、
ニューバランス 996今思えばできたかもしれない」と打ち明ける。
■300人勤務
工場には約300人が勤務しており、稼働時間は午前5時~午後11時。約8割が非正規労働者で、外国人も実習生を含めて11人いるという。
異臭商品の製造時期はいずれも昨年10~11月。一部商品では外側の方が中身より高濃度を検出していることから、“犯人”は継続的に混入を繰り返していた可能性がある。群馬県警は、商品が加工され凍結処理される前後から1階の包装室までの間で混入されたとの見方を強めている。