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余、はじめ紀行、日記等は編述せざる意なりしが、友人来たりて曰く、近来洋行者はなはだ多く、紀行、日記またすくなからずといえども、いまだ宗教、風俗に関したる紀行を見ず。君、よろしくその洋行日記を編成して世上に公にすべしと。余、よって懐中日記を出だしてこれを示す。友人曰く、これにて足れり。世人、君より政教の事情を聞かんことを欲するや切なり。君、速やかにこれを刊布すべし。余、よって懐中日記中より日月地名を除き去り、もっぱら宗教、風俗に関したる種目のみを取り出だし、一編の冊子となせり。仮に題して『政教日記』という。
この頃ピエル・ヴィエイという盲目の学者の書いた『盲人の世界』というのを読んでみた。私は自分の専門としている科学上の知識、従ってそれから帰納された「方則」というものの成立や意義などについて色々考えた結果、人間の五感のそれぞれの役目について少し深く調べてみたくなった。そのためには五感のうちの一つを欠いた人間の知識の内容がどのようなものかという事を調べるのも、最も適当な手掛りの一つだと思われた。それを調べた上で、もし出来るならば、世界中の人間がことごとく盲あるいは聾であったとしたらこれらの人間の建設した科学は吾々の科学とどうちがうか、という問題を考えてみたいと思っている。そういうわけで盲人や聾者の心理というものに多大な興味を感ずるようになった。
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